ヤマトの著作権など

──2003年7月29日──
西崎プロデューサーと松本先生のヤマトを巡る著作者人格権裁判で和解が成立しました。
新聞記事、公式発表などを参考に、これからのヤマトをここでは考えてみます。

ヤマトは誰のもの?
 1997年、『旧ヤマトシリーズ』『YAMATO2520』『宇宙戦艦ヤマト復活篇(仮題)』の製作をしていた西崎プロデューサーの会社、ウエスト・ケープ・コーポレーション(以下W.C.C.)と西崎プロデューサー本人が自己破産を申請しました。
 それまで、ヤマトの全ての権利は西崎プロデューサーのもと、W.C.C.で管理されていました。が、この破産により、ヤマトの権利(著作権など)は東北新社やバンダイに移行されてしまいます。現在、ヤマトの商品で著作権表示が“東北新社”となっているのはその為です。
 さて、その後、西崎プロデューサーの雑誌やインターネットなどといったメディアを通じた『ヤマトの著作者人格権は全て私に帰する』という発言が、松本先生と対立する事になり、これがヤマトの著作者人格権裁判へと発展したわけです。

 余談はそのくらいにしておくとして、今回の和解条項を見てみましょう。
 NIKKEI NETより記事を引用します。

「宇宙戦艦ヤマト」の著作権巡る争い和解へ
 アニメーションの「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの著作者がだれかを巡り、漫画家の松本零士氏(65)との西崎義展・元プロデューサー(68)=銃刀法違反罪などで服役中=が争っていた訴訟は29日、双方が訴えを取り下げたうえで、松本氏と西崎元プロデューサーの共同著作とすることなどで合意、和解が成立する見通しとなった。
 和解条件はほかに
(1)一審が「松本氏が関与した」と認定した一部キャラクターについて西崎元プロデューサーが「松本氏がデザインした」と認める
(2)松本氏側が次作を制作する際は「ヤマト」を連想させるデザインなどは使用しない
(3)松本氏が契約している会社が所有する「新ヤマト」の商標を西崎元プロデューサー側に譲渡する
(4)松本氏が次作に「ヤマト」の名称を使用した映画を制作することを西崎元プロデューサーが認める
――などで、最終調整を進めている。

 株式会社エナジオ(復活篇の製作会社)のサイトに和解内容が掲載されていますので、それも引用してみます。
<和解内容>
1.西崎義展が「宇宙戦艦ヤマト」の過去のシリーズ作品の著作者であり、代表者として製作および監督をしたことが認められた。
2.松本零士氏は過去の作品について、共同の著作者であると認められたが、西崎義展が著作者人格権を行使できることが確認された。
3.西崎義展は、「宇宙戦艦ヤマト」の続編および、過去の作品を利用したその他のアニメ・映画作品を製作できることが確認された。

 松本先生側は、インターネット上では発表されてないようです。(03年7月30日現在)

 簡単に整理すると、『宇宙戦艦ヤマト 復活篇(仮題)』や『YAMATO2520』と言った、旧ヤマト作品の続編という作品を作る権利は西崎プロデューサーにあると言う事ですね。そして、その事から、松本先生が製作していた『新 宇宙戦艦ヤマト』の商標は西崎プロデューサーへと譲渡されたようです。
 一部キャラクターやメカニックには松本先生に著作権が認められるわけですが、『宇宙戦艦ヤマト』という作品の著作者人格権(旧作品を使った作品や続編などを作る権利)は、西崎プロデューサーに認められるので、松本先生は自らが権利を持つキャラクターであっても独自に使う事はできません。
 ここで問題になるのは、NIKKEI NETに掲載されている和解条件の(4)“「ヤマト」の名を使った映画”ですが、これは、おそらく松本先生とベンチャーソフト社が製作する『大銀河大ヤマト編』の事でしょう。
 『ヤマト』の類似品のような『大ヤマト』ですが、西崎プロデューサーが認めた事により、実際に飛び立つ事ができます。

 さて、西崎プロデューサーは、エナジオのサイトで次のように述べています。
 現在、私は「宇宙戦艦ヤマト 復活篇(仮題)」を企画し、株式会社エナジオに全面的に製作の委託をし、その準備に入っております。
  私としては松本氏にもそれに加わってもらいたいと希望しており、松本氏もその思いであると聞いています。

 西崎プロデューサーは『宇宙戦艦ヤマト 復活篇(仮題)』、松本先生は『大銀河大ヤマト編』を製作されるわけですが、結局は、松本先生も『復活篇』に合流するのではないでしょうか?
 実際、W.C.C.が破産する前、『復活篇』の製作には松本先生も関わっておられましたし、今回の和解で元に戻ったのではないかと思っています。

 ヤマト復活へと向けたプロジェクトは、再び、動き出したのです。


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