逆転!! 戦艦ヤマトいまだ沈まず!!
第2章 時空の放浪者

データベースの解析をすませた神村少尉がデータを持って藤堂艦長の前に立っていた。
しかしその顔色はさきほどとは違いまったくさえない。
「神村、解析はすんだか?」
「ええ、まあ……しかし……」
「どうした、はっきりせんか」
神村少尉が言うのをためらっていると、こちらも解析を終えた黒田大尉が話しかけてきた。
「神村、お前の気持ちは分かる、俺だってまだ信じられんよ」
「やはり、大尉も同じ答えに行き着きましたか」
完全に弱っている神村少尉からデータを受け取ると黒田大尉は「やはりな」という風にうなづいた。
「艦長、私たちのデータはともに同じ結論に到達しました。そしてこれから導き出される結論は一連の奇妙な出来事を説明するのと同時に我々の身に起きている事態の深刻さも明示しています」
「なんだというのだ、はっきりいいたまえ」
藤堂艦長がじれて言うと、黒田大尉がややためらい気味に。
「わかりました、けど驚かないでください、あの艦隊は白色彗星帝国のものです」
「な・に、白色、彗星、帝国だと」

それを聞いて艦長以下艦橋のスタッフ全員が驚いた。
もちろんその名を知らないものなど誰もいない。
かつてアンドロメダ大星雲をはじめとする星々を制圧し、西暦2201年に太陽系に侵攻してきた大帝国である。
むろん当時の防衛軍も必死に戦い彗星帝国軍の主力艦隊であるバルゼー機動艦隊を壊滅させた。
しかし白色彗星本体には当時の最強兵器であった拡散波動砲も通じずあえなく全滅の憂き目にあってしまう。

地球ももはや終わりと思えたそのとき、白色彗星の眼前に現れたのは、あの伝説の宇宙戦艦『ヤマト』であった。
せまりくる白色彗星に対しあまりにかぼそい抵抗と思われたが、『ヤマト』の波動砲は見事白色彗星唯一の弱点であるガス体の渦の中心核をつらぬいた。
そしてその正体を現した彗星帝国本体に対し『ヤマト』はその多くの搭乗員を失いながらも勝利する。

しかし崩れゆく都市帝国の中から彗星帝国最後の切り札、超巨大戦艦『ガトランティス』が現れる。
一瞬で『ヤマト』の全戦闘能力を奪い、月をも破壊した『ガトランティス』に『ヤマト』も地球ももはや絶望と思われた。
だが『ヤマト』艦長代理古代進は反物質を操る少女テレサの力を借り、さらに『ヤマト』自体をミサイルとしその身とひきかえにこれを葬った。

ここまでは歴史の授業で習うものであるから誰でも知っている。
けれど白色彗星帝国はもう200年も前に滅んだ国家でありその生き残りも後の戦争で死に絶えて、もはや歴史の中にしか存在しない者達のはずなのだ。

「本当に、200年前のあの白色彗星帝国のものなのか」
藤堂艦長が到底信じられないといった感じで尋ねると、黒田大尉と続いて神村少尉が説明した。
「はい、敵艦の装甲金属の分析と乗組員の死体のDNA鑑定をおこないましたが、いずれも白色彗星帝国艦と彗星帝国人特有のものでした」
「こちらもさきほどの艦隊を過去のデータで検索したところ空母は白色彗星帝国の高速中型空母級、巡洋艦と駆逐艦は彗星帝国主力高速巡洋艦と駆逐艦級、艦載機は同じく彗星帝国のデスバテイター爆撃機と一致しました、そしてこれらの艦はもう宇宙中探しても博物館にしかないようなしろものです」
「ばかな、なんでそんなやつらが今頃」
藤堂艦長が頭を抱えて言うと黒田大尉はゆっくりと語りかけるように口を開いた。
「これはまだ推論……仮説にすぎませんが艦長……」
「いやまて、君は何を言おうとしているのか分かっているのか?」
黒田大尉の言葉を藤堂艦長は慌ててさえぎった、しかし黒田大尉は。
「わかっていますよ、ですが落ち着いて考えてください、あの不可思議な現象に始まって僚艦の消滅、通信の沈黙、そしてあの既に存在するはずのない艦隊、常識では考えられないことがらばかりですがそう考えればつじつまがあいます」
「ちょっと待ってください、いったいどういうことなんですか」
言っていることが理解できないというふうに桜田少尉が問いかけてきた。
「わからんか、一言で言えば我々の領域に200年前の艦隊が現れたんじゃなくて、その逆という意味だ」
「その逆って、ま、まさか」
黒田大尉はそこで一呼吸おくと皆によく聞こえるようにはっきりと言った。
「そう、我々が200年前の世界に迷い込んでしまったということだ」
「そ、そんな馬鹿な!」
黒田大尉と藤堂艦長そして神村少尉を除く全員が愕然として叫んだ。
「俺もそう思ったよ、だがな、実はもうどうしようもないくらいたしかな証拠を見つけちまったんだ」
「なんですか、それは!」
荒島中尉が叫ぶように尋ねると。
「あれを見ろ」
と黒田大尉は窓外の一角を指差した。

「あれって……なんだ、太陽か……いやあっちは太陽系の外側だ、そんなわけはない」
そこには白く輝く発光体が浮かんでいた、その光度と大きさから考えて相当大きくしかも近い位置にある。
けれども皆さきほどまでの騒ぎで気づいていなかったのだ、荒島中尉達がとまどっていると。
「神村、拡大投影してくれ」
「了解」
黒田大尉の指示に神村少尉がパネルを操作すると。
「こ、これは……!?」
そこにはこれまで誰も見たことがないほどに不気味に輝く巨大な彗星が映し出されていたのだ。

皆が愕然としていると黒田大尉と、それに続いて神村少尉が説明した。
「俺もさっき解析作業をしているときに気づいたんだ、エネルギー分布をみてもこれは本物だ」
「わたしもさっき長距離用コスモレーダーが直ったとき初めて気づきました、あの彗星の進路と速度を計ってみましたが過去の白色彗星のものと完全に一致します。それに、これを見てください」
すると今度はパネルに冥王星の姿が映し出された。
しかしそれは彼らの見慣れた冥王星の姿ではなく駐留している艦隊も星を取り巻く無数の人工衛星も存在しなかった。
さらに彼らが向かうはずだった基地の姿も巨大な宇宙港をそなえた要塞基地ではなく、せいぜい一個艦隊が駐留するのが精一杯な小規模なものだった。
あとはただ荒涼とした風景のみが続いていた、明らかに2404年のものではない。

彼らはしばし呆然とそれを見つめていたが、やがて桜田中尉が思い出したように。
「おい、ということは我々は200年前の彗星戦争のどまんなかにいるってことか」
と明らかに狼狽した声で言うと、それにあおられたように。
「なんてこった、戦争のまっただなかに一隻だけで放り出されたっていうのか、冗談じゃないぞ」
「落ち着け、まだそうと決まったわけじゃない、それにもしそうだとしても200年前の戦争だ、この『武蔵』の戦力から見たらどうってことはないさ」
怒鳴る荒島中尉を葉月中尉が冷静になだめた。

藤堂艦長はその喧騒を見下ろしながらしばらく静かに考え込んでいたが。
「それで今は対彗星帝国戦でいえばいつごろにあたるのだ」
と、神村少尉に質問をした。
「白色彗星の位置から考えて、おそらく西暦2201年○○月○○日、地球艦隊と白色彗星艦隊がぶつかる二十日ほど前と思われます」
「ふむ、ということはさきほどの艦隊は前衛の強行偵察艦隊というところか、これを撃破したことはいったいどれほどの影響になるのか」
藤堂艦長は深刻そうな面持ちになったが、艦長の言葉に疑問を持った桜田少尉が質問をした。
「影響って、どういうことです?」
「なんだわからんのか、もし仮に我々が今あの彗星戦争のまっただなかにいるとしたら、我々が彗星帝国の艦を撃沈することでこの戦争に干渉してしまったらもしかすると歴史が変わってしまうかもしれないんだ」
と言うと、葉月中尉が意外にも落ち着きはらった様子で反論した。
「そうですかね、もしそうだとしたら既に何か変調が起きてもいいはずですけど、もう艦隊ひとつ殲滅するほど暴れたのに我々にもこの艦にもそんな兆しはありません、だいいちタイムパラドックスが起きてしまいます」
「うむ、たしかにそのとうりだ、だがそれを説明できる仮説はいくつかある。よく聞け、まず一番目は我々は他の世界にきたんじゃなく、すべてはまちがいだったということ、だがいままで起きたことの理不尽さからしてこの線は薄い」
皆も同感だというふうにうなづいた。
「第二にあの艦隊を撃破したことは歴史を変えるにいたらない些細なできごとだったということだが、仮にも空母を含む一個艦隊を殲滅しているんだ、少しでも戦略眼がある指揮官なら敵の大部隊が伏兵として潜んでいると思って艦隊を送り込んでくるはずだ、まして敵のズォーダー大帝は優秀な司令官でもあったと聞いている、主力であるバルゼー艦隊に戦艦や空母は集中しているからはさみうちを避けるにはそれらの一部を分離するか増援を出すしかないはず、戦闘記録にまったく変化なしというのはおかしい」
第二の意見にも皆は同調した。
だが藤堂艦長の最後の説は皆を仰天させるに充分なものだった。

「最後に我々のもといた宇宙とはここはまったく違う世界だということだ」
「は? 違う世界って我々は過去へきてしまったんじゃないんですか」
荒島中尉が訳がわからないというふうに言うと。
「多次元宇宙論というのを知っているか、我々の宇宙は実はひとつではなく無数の少しずつ違った世界が重なり合っているというものだ、そしてそれらの世界では人の想像しえるあらゆるものが存在するらしい」
「はぁ、いまひとつわかりませんが」
「つまりだ、この世界は我々の過去ではなく、我々の過去にそっくりの別の世界だということだ」
「なるほど、そういうことですか」
荒島中尉がやっとわかったというふうにうなづくと今度は山城中尉が。
「と、いうことはここが我々の過去じゃないんなら、我々がここでなにをしようとも元の世界にはなんの影響もないってことですか」
「はっきりいえば全然わからん、なにしろ次元の壁をこえて帰ってきた人間の経験談など皆無だからな、これから起きることを見て考えるしかないだろう」
藤堂艦長がそう答えると桜田中尉がやや狼狽して言った。
「帰ってきた人間が皆無って、じゃあ我々はもう元の世界に帰れないってことですか!」
「それも未知数だ、しかし来れた以上帰る方法は必ずある、いやむしろ帰されるというところか」
「帰されるって、どういうことですか?」
「まだ仮説にすぎんがな、まず我々がここに来たのはあの光球が原因なのは間違いない、だが落ち着いて最初から考えてみろ、あの光球は我々の真正面に出現した、まるで待ち構えていたかのようにな、そして飲み込まれたのは地球軍の主力級戦艦、で連れてこられた先は地球防衛軍最後のときといわれる彗星戦争時、なにかあまりにもできすぎているとは思わんか?」
「できすぎている、と言うと艦長、これは突発的な事故ではなく何か人為的な力によるものだというのですか?」
「まあな、もし時空転移を行える者がいてそいつが地球人なら過去の悲劇の歴史を変えようと思うのが普通だ」
すると荒島中尉が怒りをまじえて言った。
「冗談じゃない、どこの誰かもわからない奴の駒に勝手にされてたまるか」
「落ち着け、まだ仮説にすぎんといっただろう、それにたとえ私の言ったことが正しいにせよ間違っているにせよ我々が未知の世界に放り出されてしまっているのは事実だ、となるとどのみち身の振り方を考えねばなるまい」
その言葉に神村少尉がすばやく反応した。
「艦長、それは我々がこの時代の防衛軍に荷担するということですか」
「神村、鋭いなお前は、ご名答だよ、この世界の防衛軍が史実のとうりなのかはまだわからんが、本艦は長期航海のせいで食料等が不足している、補給をせねばどのみち野垂れ死にだが補給をしてくれる相手はほかにおるまい、まさか彗星帝国にもらうわけにはいかんしな」
「艦長、お言葉ですが、ここが2201年の世界だとしたらこの時代の防衛軍にとって我々は異星人と変わらない存在です。事情を話してもすんなりと受け入れてくれるとは思えませんが」
「そこは私も考えた、そこでだ我々と地球の間を取り持つ仲介者をつくろうと思う」
「仲介者!!? しかしいったい誰を? 未来から来たなんていうとっぴょうしもない話を信じなおかつ防衛軍に仲介をしてくれるほど柔軟で影響力のある存在がいるとでもいうのですか」
ほかの者たちも神村少尉の言うとおりだというように懐疑的な顔をしている、しかし藤堂艦長ははっきりと言い放った。
「いる、地球で唯一、あらゆる困難と理不尽を不屈の闘志と柔軟な思考で乗り切り、不可能を可能にした者達が、この時代にはまだ生きている」
その言葉はこの場にいるすべての者にひとつの名を思い出させた、あまりにも偉大で誇りと栄光に満ちたその名を。

「ヤマト……」

「そう、これは私の仮説だが、我々がここへ呼ばれたのは「ヤマトを救え」という意思に導かれたのではないかと思う、史実においてヤマトの犠牲により地球は救われた、しかしその後はどうだ、多くの戦士を失ったからとはいえ軍備を魂もたぬ無人艦でしめたあげくに地球の崩壊をまねき長い占領の苦難と屈辱を味わうはめになった、だがもしあのときにヤマトがあったらどうなっていただろう、いかなる苦難にもくじけず肉を切らせて骨を断つ捨て身の覚悟を持ち、機械にはけっしてまねのできない戦いのできる者たちがいたら地球は独立をたもち続け宇宙の平和を守る働きができたのではないかと」
その場にいた全員が艦長の言葉を真摯に聞いていた。
だがやがて葉月中尉が静かに反論した。
「お言葉ですがたとえこの戦争でヤマトが生き残ったとしてもあの暗黒星団帝国の大規模侵攻に効しきれたとは思えませんし、その後のボラーやディンギルとの戦いで地球単独で勝てるとは思えません」
「そう、ただの戦力でいえばそうだろう、だが違うのだよ、かつて我々の先祖は理不尽な侵略に必死で抵抗した、暗黒星団帝国の侵略にパルチザンとなり抵抗しボラーやディンギルとの戦いにも暗黒星団帝国の力を借り植民地軍となる屈辱に耐え地球を守った、今我々がいるのは勇敢な先人たちの犠牲のおかげだ。だがなあのころの人々には戦意もあった、勇気もあった、戦う力も守るべきものもあった、しかしひとつだけ足りないものがあった、だからあのとき地球人類は最後の勝利をつかめなかった」
「艦長……」
「それは『希望』だよ、あのガミラスのときヤマトがいたから人類は放射能の恐怖に耐え待ち続けることができた、この白色彗星との戦いでもヤマトが戦い続けたからどんなに追い詰められても降伏しなかった、しかしヤマトを失った地球に信じられる希望はなくなってしまった」
皆、確かにそうかもしれないと先人たちの戦いの歴史を思い浮かべていた。
かつてパルチザンは暗黒星団帝国の侵略に対しゲリラ戦を繰り広げ抵抗を続けた。
しかし暗黒星団帝国の切り札重核子爆弾の前では小規模な破壊活動を行うくらいしか手はなかった。
だがもしあのときヤマトが生きて暗黒星団帝国を攻撃していたらどうなっていただろう。
ヤマトによる敵本星攻略を信じパルチザンはもっと大規模に行動できたかもしれない。
ボラーやディンギルのときもヤマトがいればいかに戦力が小さくともあきらめずに戦いつづけることができたであろう。
それほど当時の人々にとってヤマトは大きな存在であった。

「もし我々が傍観者として戦いに干渉せずこのまま見守っていたらどうなる、おそらく防衛艦隊は全滅しヤマトも沈み史実と変わらぬ屈辱の歴史を歩むだろう、私にはとうてい耐えられん」
艦長の言葉に荒島中尉や桜田中尉などはいますぐにでも彗星帝国に殴りこみをかけようとでもいうように闘志のみなぎった顔をしている。
しかし神村少尉あくまで冷静に考えていた。
「艦長のお気持ちはわかりました。歴史を改変したいというご意思も否定はしません、しかしどのようにして変えていこうというのですか、ただこの艦の戦闘力をもってして彗星帝国軍を壊滅させればよいというほど簡単ではないでしょう、下手をすれば史実より悪くなる可能性もあります」
まさにそのとうりであった『武蔵』の戦闘力をもってすれば一隻で彗星帝国すべてをたたきのめすことも不可能ではない。
しかしそれが地球人にとって本当によいことなのかといえば疑問符がつく。
大勝利は人を勝利の美酒に酔わせ浮かれさせる、そしてそれは油断と慢心を生み、やがて取り返しのつかない破滅へと導くことになる。
かつて『大和』が戦った太平洋戦争におけるミッドウェーの海戦も99%勝てる戦力を持っていながら連日の勝利に浮かれていたために必死に立ち向かってきた敵によって大敗北を喫してしまった。
「そうだな、ただ負けいくさを勝たせればよいというわけではない、このまま地球軍を勝たせてものちのことを考えれば逆効果になりかねん、みなも訓練学校時代の戦史の授業で習ったように対彗星帝国戦においての防衛軍の敗北の最大原因は白色彗星の破壊力をあなどり拡散波動砲の威力を過信した慢心にあるといわれている、残念ながら我々が助け舟を出して彼らを救っても彼らの慢心を助長させのちの暗黒星団帝国戦でさらなる大敗北をきっする恐れがある」
その言葉に桜田中尉がさっと反応して。
「ですが艦長、我々は地球のこれまでの歴史を知っています、それにこの時代よりはるかに進んだ技術力があります。これを伝えれば暗黒星団もボラーも前もって万全の態勢で迎え撃てるんじゃないですか」
というと藤堂艦長は。
「桜田、戦いは人がするものなのだよ、たとえ彼らが我々の持つ情報と技術を得たとしてもそれを使いこなせるのか? むしろ強大な力を得てのぼせあがるだけじゃないのか? 無敵神話でふやけきった頭で戦争ができるわけがなかろう、だいたい戦力差だけで戦争に勝てるならヤマトはとっくに沈んでいるよ」
荒島中尉も桜田中尉ももっともだと思い考え込んだ表情をした、しかしすぐに気をとりなおしてまず荒島中尉が意見を述べた。
「ですが艦長、艦長もさきほどこの戦争に介入しヤマトを救うとおっしゃったばかりではないですか、白色彗星を打ち滅ぼさずして地球の未来はありませんよ」
というと藤堂艦長は涼しげな顔で。
「荒島、まだ若いな、さっき言ったろう? 負けいくさを勝たせればよいというわけではないと」
「??? それはどういう……」
葉月中尉も桜田中尉も訳がわからないという顔をしている、艦長とつきあいの長い黒田大尉は何事かを察したようでニヤリとしているが山城中尉は腕ぐみをして考え込んでおり切れ者の神村少尉でさえ艦長の考えがわからず渋い顔をしている。
「やれやれ若いくせに頭の固い連中だ、ならば10分後に作戦会議室に集合せよ、少し石頭をやわらかくしてやるわい」
そういって艦長は座席ごと階下の作戦会議室へ消えた。

はたして藤堂艦長はいかなる秘策をもってヤマトを、地球を救おうというのか
戦艦『武蔵』はいかなる影響をこの世界に及ぼすのか
本来ありえるはずのない流れがいまゆっくり歴史という名の笹舟を引き込もうとしていた

第2章 完

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